瓢箪の中で豆を掴む猿にはなるな
日経新聞の報道に拠れば、acTVilaがデジタルテレビ共通IP機能を利用したVoDを始めるのだという。acTVilaの立ち上げには少しく関わるところがあった*1身としては、ちょっと引っかかる。
この報道は少し気になる。というのも、これは極めて危険な兆候だからだ。
IT/通信/デバイス/メディア/コンテンツ系のビジネスは極めて複雑に絡み合っている、ように見えるが、整理すれば極めて単純なレイヤー構造で表現することができる。一つのレイヤーの中では互換性が高いいくつかの事業が競争的に併存し、別のレイヤーのビジネスとの連携を模索しながら、そのレイヤーの中での覇権を争っている。
こうした構造の中で、もっともオーソドックスな戦略とはレイヤーを越えたアライアンスであり、もっとも危険な戦略は別レイヤーに独自資本による事業で橋頭堡を築こうという戦略である。しかし、しばしば日本の企業はそのもっとも危険な戦略をとる。おそらくそれは、アライアンスによる勝利は薄く広い利益しかもたらさないためだろう。MSに代表される広く厚い利益を獲得することを日本企業はしばしば夢見る。誰しもができることをすることの帰結として、である。そんなうまい話はない。
acTVilaは、デバイスレイヤーの有力事業者であり、同一レイヤー内の競合としてはPCやアップルTV、wiiなどの潜在的STBがある*2。そのacTVilaが自らVoDをするということは、基本的には馬鹿げた話だ。NeoIndexやその他の事業者がすでに先行するサービスレイヤーで自らそれを構築することは時間とお金の無駄であり、同時に、デバイスレイヤーの他の事業者に隙を見せることにもなる。
ただし、表面的な報道ではそうでも、もう少し紐解いてみれば、案外考え抜かれた手であるかもしれない。チェックポイントは、acTVilaブランドの裏側にあるアライアンス戦略だ。例えば、ブランドはacTVilaでも、実際はNeoIndex等先行サービス事業者にまかせている、とか。例えば、自主事業なのだが、民放のキャッチアップサービス用のコンテンツ利用契約は事前に結べている、とか。
情報が少ないので結論は出せないが、やはり注意してみておく必要があるだろう。なぜならacTVilaは、デバイス認証サービスを中核として派生した基礎サービス群であり*3、そこに立脚した強固なDRMがたまたま映像配信にむかって延びているだけだからだ。まさか広告代理店モドキのことをしたり、コンテンツを作ったり買ったりといったレイヤーの仕事をして、年商50億とか100億とか馬鹿げたあり得ない事業シナリオを目指したりしてはいないか、と年甲斐もなく心配している。
acTVilaの弛まぬ前進に期待しながらーーーー
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