文化審議会でコミケについて語ったこと

詳しくは文化庁から議事録が公開されると思うのでそちらをご覧頂くとして、予告通り本日(27日)、コミケについて語ってきた。
天秤の主張の基本ラインは、<コミケは産業基盤の一部でもある/コミケでの二次創作は著作権フリーだけの素材では成立し得ない/二次創作はその維持のために開放されるべきである/昨今の知財意識の高まりから二次創作者の萎縮効果を防ぐには「阿吽の呼吸」だけでなく何らかのルール定立が要る/ただしルールのあり方は著作権法改正よりは契約法や権利者の事前メッセージなど二次的でソフトな手法がよい>ということで相変わらず一貫している*1
ここで、里中満智子大先生*2から、「コミケと言ってもきちんと『創作』する人は少数で、後は愛情のあまりのパロディ。コミケが全てきちんと『創作』する人の場であるかのように言うのはミスリード。あくまで前者を認めたから権利者はコミケ観を変えたのであって、後者の話はまた別」というツッコミがあった。天秤からは「『創作』重視の方が少数派なのはその通りだが、両者の判別は不可能である(加えて、またそれをする必要もない)。問題の根幹は、同人誌の取引規模が拡大し『第二市場化』したため、そのお目こぼしの影響が大きくなってしまったことだ」とお答えした。正直言って、こんなやりとりをできるだけでも、マンガファンとしては光栄なことである。
他にも、ドワンゴの川上会長はユーザーに一身利用権を販売する形に著作権システムが移行しないと、ヘビーユーザーほど違法コンテンツに迂回するからコンテンツ収益システムが毀損するぞと指摘したし、東京大学法学部の大田教授は一般ユーザーと著作権法の想定する違法/合法の間には大きなズレがあって、それを吸収しないといけないという指摘した。それぞれなかなか面白くて、自分のプレゼンが終わった後だったという安心感もあって、天秤は楽しく聞けました。
興味深かったのは、こうした話を受けて、文化審著作権部会「過去の著作物の保護と利用に関する小委員会」の委員の中から、興味ある発言がされたことだ。ある委員は、これまで保護期間問題は独立した問題だと思ってきたが、それは誤りで、著作物を社会的にどう扱うか様々な問題の一部、戦略の一部として考えるべきだという趣旨の発言をした。別の委員からは、延長か延長しないかという話ではなく、延長するならどういう措置を講ずる(ことで副作用を抑制する)か、延長しないならどういう措置(で調整)をとるかということを考えるべきだという言葉もあった。
議論の展開に少しでも貢献できたなら、天秤としては嬉しい限りだ。

*1:正直言って、一番違和感があったのは、こういう主張を「著作権の保護期間を延長するかどうかの議論」の中でするということだった。だが、本文にある通り、このミスマッチは意外な展開を引き起こした。

*2:里中先生は文化審議会著作権分科会「過去の著作物の保護と利用に関する小委員会」の委員でらっしゃいます。