次のテレビを巡る迷走は止まらない

パナソニック*1がYoutube対応テレビを日本でも発売した。同様の商品を米国で発売した際に、その方針がかなり微妙なものであることは今年1月のエントリーでも書いたが、あぁ、やっちゃったのね。って感じだ。
片方を見れば、アクトビラ方式はITU-TでIPTVの国際規格の候補として奮闘しているらしい。ライバルは欧州方式なのだが、NGNの考え方に固執して映像データをすべてIMS*2経由でやりとりするためIMSの処理能力がボトルネックになってしまう。日本型の場合、セッションを張るところではIMSを使うが、そこから先はIMSを使わなくてもよいので、IMSのキャパにはさほど影響を受けない。IMSへの投資を抑制したい国々にもアピールしそうだ。
ならば、より規模の経済性を発揮すべく、まずは日本で対応テレビを主流に押し上げる。そして、さらにプラットフォーム層も一気に世界を獲りに行く、というのが企業戦略というものだろう。
そこで自分で自分の足を踏むような「YouTubeテレビ」なんて出さなくてもよさそうなものなのに。
YouTubeテレビ」は、アクトビラ方式を他社にも開放し、IPTV放送が一般化したあとにゆっくりやればいいくらいのものだ。そうでなければ映像産業の調整が破壊的なものになる、ということもある。だが、パナソニックにしてみれば、みすみすIPTV、いや、テレビという商品を殺す所業だということの方が意味は大きいだろう。何故ならば、「YouTubeテレビ」が成功すれことは、TV向けUIを備えたYouTubeサイトを表示できるPCと大画面モニタの組合せにテレビそのものが代替される道が大きく開かれたことを意味するからだ。
いやはや、技術の進歩とはかくも盲目に世の中を壊していくものか。
しかし、その技術の進歩に対応して変わらなければならないのが世の中というものか。
まさに、文明とは前に向かって走るもの、そして前とは前、西か東かどうでもよい*3ということなのだろう。

*1:もう「松下」って言わないのね。

*2:3G携帯の3GPP陣営が規定したIPマルチメディアサブシステム。これで音声、映像などを統合したデータ通信システムを構築することがNGNの核であり、別の面から見れば、これこそNGNを一般のインターネットと差別化する仕組みである。

*3:佐藤史生著「ワンゼロ」(小学館プチフラワーコミックス版第3巻P183)より。