日々是雑感(いつまで続く?そろそろ個別タイトルにする?)

へっへっへ。情報は錯綜する。不確実さは呑み込みながら前に行くのが「大人」というものかいな。



話題、1。電通が民放キー局と組んで配信会社やるという突然の報道誤報かな?と思ったら、公式リリースも出ていて、ガセではなかったのですね。日頃からメジャー型ビジネスほど新メディアをパクつけ!という論者だったので、こうした動きは大歓迎です。コンテンツという商品は、転売はできない*1わ、体験しなければわからない上に品質のばらつきがひどいブラックボックス商品だとか、ハンデが大きい。だから、広告費で無料化するか、有料であっても広告費のような「最低限の収益」で下支えして一定量まとめて商品化してあげないとまともな商品にはならないと思っています。だから、この話は結構腑に落ちる。というか、このニュースはもう少しプレイアップされていいんだけどなぁ、とも思う。



話題、2。慶応大学の金正勲先生と久しぶりにトークする。コンテンツ政策の理論化はMicro、Meso、Macroの三レベルで検討すべきということに共感する。コンテンツ産業の理論は、少なくとも、(1)コンテンツの生産と消費、そこにある違ったインセンティブカニズムの相互関係の理論、(2)そのコンテンツ行為を実現するメディア環境が経済活動であることを認めた上で、メディア環境のビジネスモデルにおけるコンテンツ行為の相互関係(主として環境整備の責務と、環境使用料の関係)の理論、(3)そのメディア環境の維持とコンテンツ行為がその外にある一般的経済活動において果たす機能を前提に、一般産業との相互関係(主として、企業活動におけるツールとしてのコンテンツ使用(広告)と、商品としてのコンテンツ使用(投資)の二つ)、という三つのレベルでの議論が整理されていなければならない(と僕は思う)。やっぱり、教科書作りはいるなぁ。役所で仕事をしていると、基礎理論はそっちのけで「今年何やる?」みたいな乱暴な話が乱舞する*2のだけど、それではいけないと思いつつ、分かってもらうために今更何時間も諸先輩方にえらそうに講義をたれるわけにもいかず。弊害が出るのは覚悟で、「芦部信喜憲法*3みたいなはっきり見える通説がとりあえず今はあった方が、議論の効率化ができると思う。僕にも何かできるかな?



話題、3。Blogにするとポジティブな書き方をする人が多くなる、という調査がまとまる。けっこう、奥が深い。ポジティブな書き方をする、というと、反対側には、よくネットに関するオジサマ系お茶のみ話ででてくる「ネット上での無責任な批判」という言葉が思い浮かぶ。とすると、これが「発言の責任感」と「匿名性・顕名性」というテーマに繋がっていることにピンと来る。今回の調査で興味深いのは、「ブロガーは匿名であっても読者との継続的な対話になるため、掲示板での書き込みに比べて非建設的、悪意的な誹謗・抽象に走りにくいのではないか」という調査人のコメント。ふむ。ごく基本的なことだが、匿名と顕名は単純な二分論ではなく、(1)全くの匿名(一時的な名前、又は捨て名)、(2)リアルに結びつかない顕名、(3)リアルとリンクした顕名*4、という三段階になっている*5。この(2)が曲者で、この中途半端な顕名性の顕名度はこの名前の使われ方、認知の構造などによって、(a)一部の人にはリアルがわかる顕名、(b)継続的使用によってバーチャルな場の中でのリアルとなる顕名、とかなんとか、いくつかに分類可能だと思う*6。まだ生煮えなので議論が難しいが、この調査は(2-b)のレベルでの顕名性であっても、2ch的攻撃性は抑制できるぞ、ということ。本来は、2chでのコテハン書き込みとそうでない書き込みのカキコ態度に関する調査をすべきとこなんだが・・・*7



話題、4。SNSはmixiが圧倒的なんだそうな。いや、別によく聞く話だからびっくりはしないけどさ。でも、俺はGREE中心派なんだよね。シンプルなのがいいのさ。それにしても、そのうち、SNSISPとくっつくと面白いことになる*8んじゃないかと思うんだが*9



話題、5。ビットトレントとMPAAが提携した。詳しい記事が多いから細かくは書かないが、よろしいんではないでしょうか?というか、これも歓迎。P2Pという言葉は結構マジックワード*10になっていて、誤解が多い。柔軟性に優れたトポロジーの流通システムとして真面目に注目してもいいものだから、こういう組合せは歓迎なのである。「自由を標榜するコピーレフター」の皆様とは、意見が一致しないと思うけどさ。



 さて、さて、立ち止まっていても話は進まない。もはや師走目の前、来年の準備をしなければならないだろう。自分らしく生きるための闘いの準備というやつを。




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*1:パッケージメディア形式なら転売できる、という方もいるでしょう。この指摘は奥が深い。ただ、それがコンテンツという商品の転売かどうかは議論すべき処。因みに、僕は、コンテンツは体験時に消費され、権利として売買される債権商品なので原則として転売はできない。むしろパッケージメディアもそのルールに従って転売は禁止されるべきだ、と考えている方なんで、そこんとこ、夜露死苦(死語)!。

*2:自分の実現したいピースだけ採用してもらえばよいと割り切る人も多いが、それは文脈を無視して言葉だけ置く、或いは地形を無視して家を建てるようなものではないか。しばしば、他の言葉、他の建造物と、ぶつからないまでも、ふしぎな関係を生んでしまい、ふと気がつくととても読みにくい文章、醜い景観になっていて、むしろ折角の工夫が台無し、みたいなことになったら目も当てられないと思うのだけど。それって、青臭すぎ?

*3:念のため言っておくと、僕自身は「芦部憲法」が読めなくて、「佐藤幸治憲法」を読んだくちである。一本調子の自説の解説ってのは、僕のようなあまのじゃくには読めないのね、疑問ばっかり浮かぶから。その点、「佐藤幸治憲法」は、テーマ毎に、解説、議論して、選択肢を示した上で「俺はこれ」という組み立て方だから、あまのじゃくな僕でも「だったら僕はこっち」みたいな読み方ができるので、読みやすかった。あえて挑発的に言えば、「芦部・憲法」って権力的で、通説を鵜呑みにして試験受かればいいやみたいな、権力に従順なひつじさんとか、現実に従順な浅い功利主義者に受ける本、って感じがして、個人的には好きではありませぬ。

*4:余談だが、このブログはそういう意味で、けっこう真面目に書いている。日々の事柄を細かく関係者の実名をあげて暴露したりはしないけど。単に自分の品位の問題、そして世間との仁義の問題として。

*5:誰だぁ?!、単に中間を付けただけだろ、というヤツは。怒るぞ(-_-#)!鋭すぎて(^_^;)

*6:他の区分もあるだろうし、そもそも他の分類法もあるだろう。

*7:誰か予算付けてくれないかなー

*8:SNSのアドレスは、ISPのメアドと並んで、クレジットカードの番号とフリーのメアドの中間くらいの確かさかな、と思うわけ。ISPのメアドは機能プアだけどほぼ全員確実に持っているという普及度が魅力。SNSは誰でも持ってるわけではないが、持ち主が属性を晒したりして「関係を生み出す基盤」としての機能リッチが魅力。両者が結びついたら結構な社会インフラになるんではないかと思うわけ。

*9:ある種、完備しすぎてつまらんかもしれんが。

*10:境語では「それが何を意味しているか{はっきりしない/話者によって異なる/社会的合意は必ずしもできていない}が、それを言うと話が収まってしまうような言葉。」を指す。しばしば、社会的流行語となるカタカナ語、例えば、“IT”、“コンテンツ”(特に“キラーコンテンツ”)、“ユビキタス”などはだいたいこれ。そうなんだよねぇ。「鰯の頭も信心」からというけど、「信心」=流行するためにはそれが「鰯の頭」=よくわからないものである必要があるのであって、むしろ「鰯の頭だから信心」という方が正しい。マジックワードなんて言うこと自体がやや皮肉っぽいんだけど、実際は、マジックワードだから流行するということで、むしろ、よくわかったものをそれでいて信奉することって難しいんだなぁと感じ入るべきなんだろうな(ここら辺、コンテンツ産業論的には結構深い話なんだが、それはいずれ)。カタカナ語に限らず、”安全”や”信頼”、”社会”といった言葉もマジックワードになりうるが、これは流行新語というよりは、イデオロギー的な言葉であるが故に、問題の因数分解を放棄するために便利な言葉というにすぎない。今更ながら驚くが、ここであげている言葉の多くが、僕がメシの種にしていることそのものなんだな(爆笑)。