スピードレーサー

 この作品は5月に台湾で見てしまったので、今さらではあるのだが、とにかくスタッフ(というかウォシャウスキー兄弟?)の原作への愛が溢れている作品だ。とにかく映像が印象的で、アニメの実写化の手法として一つの地平を開いた感もある。けれど、まぁ天秤が注目するのはそこではない。
 考えさせられるのは、ピ(Rain)が演じているTaejo・トーゴーのことだ。伝えられるところでは、ピは当初日本名であったキャラクター名を韓国名に変えさせたという。
 ピのこの主張は、本当だとすれば、全くプロ失格のものである。Taejoは、ハングルのローマ字表記としては納得できるが、日本名としてはかなり奇妙だ。これは、少なくとも東アジアの観客には、この作品の設定に不整合な印象を残しかねない。そんな作品へのマイナスを自分の我が儘で来すべきではない。
 もちろん、プロデューサもそんな我が儘を許すべきではないことはもちろんだ。
 ピには申し訳ないが、映画「スピードレーサー」は原作であるマッハGO!GO!GO!への愛で貫かれているので、極めて日本色の強いものになっている。ピは、そういう意味では、日本に傾倒した映画に出演したという評価からは免れないわけで、名前を韓国名にした効果なんてあるのか?という感じはする。
 ただ一つ肝に銘じなくてはならないのは、そんな風に「国家主義」が作品に負の影を与えることがあるということだ。