あけましたね。おめでたいかな?

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あけました、あけました。
で、いきなりですが、2009年はどういう年か。


前年に始まった金融・資本市場の収縮は夏頃まで止まらない。
実体経済はこれでデフレ傾向になり、賃金の調整動向に注目が集まる。注目されるのは正社員組と非正社員組の対立*1で、両者の人数的構成が以前に比べ拮抗しているので、かなり厳しい分配調整の議論が起きるだろう。
同時に、正社員組と非正社員組、両者の分布が年齢や性別などの要素別に見てかなり不均衡なので、この対立は世代間対立や性別間対立など様々な軸の対立に転嫁されて様々に論じられるだろう*2
こうした風潮の変化は、70年代のアイドル=カワイイ文化の勃興や、90年代初頭のスター=マッチョ(実力主義)文化の復権に続く新しい傾向を日本の価値消費シーンにもたらすかもしれない。20年周期説ではピッタンコ、25年周期説では少し早いというところか。


コンテンツ産業では、ここで二つの大きなベクトルが同時に働くことに注意が必要。
一つの波は、この経済状況とデジタル二重革命の影響で、すでにテレビメディア産業の覇権についに黄色信号が明確にともっている。これはその真上に立つ映像コンテンツ産業や周辺産業に大きな危機となる。もう一つの波は金融・資本市場の収縮で、上記の収入減の補填を外部資本市場に求めることが厳しい状況が生まれている。
結果的に、閉鎖系の調整が行われることになる。既存の企業による、収益源の開拓とそこへの消費者の巻き込みというプロジェクト志向のビジネスモデル調整が基調になる。これが、メディア、コンテンツ、キャラクターの三つの産業レイヤーで同時進行で進む*3
いわゆる放送と通信の連携とか融合という議論は、この流れの中でなし崩し的に進む。これまでテレビメディア産業が避けようとしてきた映像流通路のマルチ化=テレビメディア産業からテレビ系映像産業へのシフトという事態は、テレビ局のエゴという次元を越えて、避けられない。ここにおいて、制度論はもはや主役ではない*4
ただ一つ見えないのは、新しい要因として、他方で対するネット側でも無料広告モデルというビジネスモデルに黄色信号がともっていること。デジカフェの苦悶が単なる敗者の嘆きでネット上のコンテンツ・サービスに市場の選別が進むだけなのか、それともCATVの基本サービスよろしく有償コンテンツ・サービス市場が形成されていくのかには要注意。これまで天秤はこの可能性をやや簡単に等閑視してきたが、もし後者の道へ進むなら、事態はかなり好ましい方向で変わることになる。


という年なのだ、と思う。
2002年頃の見通しがやや過激な形で現実になってきているということ。
それを先取して対処しようという試みはほとんどダメだったということ。けれど、今まさに現場は動いているので、今がやり時という感じはある。
ただ、それを従来の政策立案プロセスに求めるのはムリかもしれない。規制緩和の時にも感じたことだが、こうした「流れの変化」への感度が今の官僚機構では*5圧倒的に鈍い。だとすると他の政策立案プロセスを開拓しなければなるまい。コンテンツ学会がそういう役割を果たすことに期待する。


で、天秤は考えている。目の前にはいくつかの道がある。その選択をする。まだ道は増えるかもしれない。でも選択しなければならない。
天秤らしい選択。
天秤らしい道を選ぶこと。
それが今年の課題かもしれない。


そんなすばらしい年があけた。
あけましておめでとうございます。


とりあえず、さぼらないでブログ書こう・・・



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*1:すでに90年代に55年体制の一角を担った総会社員(正社員)体制は非正社員という社会集団を生み出すことで壊れていたわけだが、その後の好景気(もっとも世間的にはそう呼ばれてはいなかったが)の中で両者の乖離は抑制的だった。

*2:本質はそこにないのですが、なにせ議論がステロタイプにできるので簡単で楽しいですから、こういう場合、しばしばこのテの対立が論じられます。まぁ社会的ガス抜きとして悪くはありません。

*3:その結果、クソコンテンツとよく練られた戦略的コンテンツへの分化は止めようもない。うまくすれば、クソコンテンツの領域に、新規プレイヤーの戦略的コンテンツが流し込まれてうまい具合にクオリティが保たれることがあるかもしれない。例えば、深夜のクソ通販番組に混じって、長崎最強のコンテンツであるジャパネットタカタが君臨するように。余談だが、長崎文化放送あたりがジャパネットに買収されたりするととても面白いことになると思うけど、どうだろうか?もちろん、ジャパネットにはあんまり美味しい話じゃないけどさ。

*4:ただし、うまくすればそれを支えられるような柔軟なものが生まれて、この動きを促すだろう。間違って硬直的な制度が生まれても、業界のメカニズムで調整されて、実態は同じことになる。ただ、制度屋としては、いい制度が生まれるようになって欲しいと思ってはいるのだが。

*5:今に限らず、いつの世にもそうかもしれないが。