9/1アップルイベントを振り返る。

9/1(米国太平洋時間)にAppleが発表した各製品群について所感を述べておくにょ(これ仕事らしいからにゃ)

iPodには迷いが出てきたな…
 iPodについてはコメントすることがない。敢えて言えば、iPod touchが「通話機能のないiPhoneである」ことがこれ以上ないくらい明確になったこと、iPod nanoが壊れた(笑)こと、iPod shuffleで初めて「先祖返り」*1が起きたことくらいか。

■iTunes10のPingって…
 最も重要なのは、これである。
 コンテンツの編成表を巡っては、従来の供給者の独占的供給が様々な技術革新で段階的に消費者側の手に渡ってきた。その現時点での最終形態がGoogleSearchに代表される嗜好データに基づく抽出である。しかし、そこでは「自家中毒のパラドクス」*2のために、何らかの第三者の介入が必要になる。
 問題は、その第三者の介入はどのように為されるべきか、ということだ。介入が必要だから、少なくともレファレンスとして供給業者の編成表は意味を持つ、という考え方も十分にある。だが、それは余りにネット空間の発生を無視していて、なんだか別の方法がないかと思いたくなる。
 そこで、Ping、つまり、コミュニケーションの中で嗜好が交錯するところから、意外な提案を受け入れるようになるメカニズムを活用するという考え方が出てくる。
 実は、Appleらしいのだが、ここに至るまでiTunesは段階的に進化してきた。まずプレイリストを導入し、それを互いに参照できるよう相互公開させ(iMix)、それをベースにシステムからの編成提案を導入し(Genius)、そうしてようやくこぎつけたのがPingである。この手のサービスの場合、個人の視聴履歴を解放してもらえるかどうかが鍵なのだが、ここに至るまでの段階的措置は利用者の精神的ハードルをかなり下げている。期待は十分できる。
 問題はなくはない*3が、期待はできるだろう。

■新AppleTVってさぁ…
 それ以上に論評のネタに最適なのが新AppleTV。
 まず、新AppleTVはローカルストレージを無くして完全ストリーム端末にした。中身はほとんどiPod touchという話もあるが、徹底的低価格でとにかく買わせる戦略か?
 とはいえ、一番のツッコミどころは、Netflixとの提携ではないか?
 音楽販売ではiTunesMusicStore以来一貫して自社サービスで圧してきているAppleだが、映像ではそれを放棄したと言うことだ。とはいえ、実は映像ではすでにYouTubeと提携していたので、目新しいことじゃないんだがw
 だが、AppleiPodで切り拓いたデバイスクラウド生態系のビジネスモデルはAmazonや他のビジネスにも波及していて、中にはAppleより先行したものなんていくつもある。デバイスレベルで競合する相手と組むのは?だが、少なくとも先行するサービスとは組みうるわけだ。
 だが、そう来るとAppleTVの優位性は何かと言うことになる。一つはiTunesサーバとの親和性であり、家庭向けサービスとしての使用感の向上だ。或いは、冒頭に指摘した低価格(TV買い直しにならないということも含む)もあるだろう。だが、おそらくAppleが狙うのは(成功するかどうかは別にして)ユーザーエクスペリエンスの競争力だろう。
 というわけで、境は、次にAppleが強化してくるのはFrontRowだと思うのだよね。ひょっとするとFrontRowとiTunesのインターフェースの融合を狙うとか。
 ただ、個人的には、長年言っているように、(有料)VODが全ての始まりであり、これを越えずに何人も次には行けないということをAppleTVが証言してくれたのがよいと思うのだよ。

*1:一度捨てたデザインをもう一度復活させること。アップルはなかなかやらない。

*2:自分で選んだコンテンツだけを消費すると、一見して自らの嗜好に合うので効用が最大化しそうなものだが、実は過度に予定調和になって、飽きが来やすいということ。

*3:事実、すでにPingセキュリティホールになったとの指摘がなされているし