突然ですが、慶応大学メディアコムの授業設計書をアップします

 金曜日に学生諸氏に無駄足運ばせちゃって、心痛の極み。少しでも効率的に授業を運びたいので、15日に先駆けて、現時点での全体構成*1をアップロードしておくことにしました。学生諸氏は、これを見た上で金曜日講義に来て貰えると効率がよいかと思います。
 よろしく!


2005年度のメディアコム講義計画


第1話 ガイダンス〜コンテンツを巡る産業と経済のメインフレーム
 1 自己紹介
 2 コンテンツ商品の生産と流通と消費
 3 コンテンツ財の経済学のフレームワーク
 4 コンテンツ産業の制度フレームワーク
 5 この授業でやること


第2話 早わかり:一般コンテンツ産業理論
 1 個別産業モデル解剖:映画、出版、テレビ
 2 コンテンツの流通産業とその機能
 3 コンテンツ制作の資金調達と広告代理店の機能
 4 コンテンツ産業と競争政策
 5 産業構造転換と新市場開拓戦略


第3話 キャラクター産業としてのアイドル産業理論
 1 イメージ財の位置づけ
 2 アイドル産業の発生〜映像産業部門の構造調整過程を考える
 3 需要心理の変化とビジネスモデル:花の中三トリオからモー娘。
 4 アイドル産業の一般戦略モデル
 5 アイドル産業の新戦略モデル〜セントフォースの戦略を考える


第4話 コンテンツ商品の経済学とデジタル技術
 1 コンテンツの取引とメディアの取引
 2 商品形態と価格決定〜価格の「意味」を考える
 3 技術発展と産業形態の変遷〜音楽産業を例にとって
 4 デジタル化されたコンテンツの“売買”はパンドラの箱
 5 デジタル化されたコンテンツが開く新たな市場


第5話 文化的価値と経済的価値〜コンテンツにまつわる価値二元論と一元論
 1 文化政策の理論と「文化市場」説
 2 “経済的価値”の背景〜交換理論の展開
 3 文化的価値の決定構造
 4 文化的価値と経済的価値、貴族制と民主制、権力の所在
 5 文化政策の新たな方向と映画支援策の新展開


第6話 デジタルコンテンツの産業と政策〜映画編〜
 1 デジタルシネマの歴史〜特撮、SFXからCGへ
 2 メディア間の競争と融合〜デジタルシネマとハイビジョン物語
 3 デジタルシネマを巡って二分する業界
 4 映像産業になれない映画産業
 5 日本を置き去りに進むデジタルシネマ。キャッチアップする?できる?


第7話 コンテンツ産業のビジネスモデル再論〜メジャー型とインディーズ型
 1 流通産業の機能論をもう一度考える
 2 ニューミュージックの台頭に見る嗜好多様化時代のビジネス戦略
 3 インディーズ型ビジネスモデル〜vsメジャー?
 4 コミュニティの功罪〜戦略的設定は可能か
 5 インディーズを支えるもう一つのメジャービジネスの力学


第8話 再生産を支える産業基盤としての法制度概論
 1 知的財産権の機能
 2 コンテンツ商品の性格と知的財産権の性質
 3 著作権法〜隣接権過剰保護が生む契約問題
 4 独占禁止法再販制度と委託販売制度、その功罪
 5 肖像の法的保護〜拡大するキャラクター産業への対応


第9話 再生産を支える産業基盤としての著作権法の矛盾とその解決法
 1 デジタルコンテンツの利用形態
 2 中古問題とメディア売買主義の限界
 3 協業的生産の環境整備はどうすればよいか
 4 基礎的法律関係の規定と契約自由主義の徹底をどう両立するか
 5 死蔵抑制と透明性を同時に実現する価格決定システムは可能か
 6 著作権法システムはデジタル体系にどう整合できるか


第10話 デジタルネットワーク流通を巡る力学
 1 iTunesMusicStoreの分析
 2 テレビ番組のネットワーク配信〜錯綜する戦略
 3 ネットゲームに込められたゲームベンダーの戦略
 4 デジタルネットワーク対応のインセンティブ
 5 ビジネスモデル〜鍵を握る広告代理店の舵取り


第11話 デジタルネットワークの消費心理とビジネスモデル
 1 デジタルネット時代の流通産業の機能とは何か
 2 ダイナミックな出来事をプロデュースすると言うこと
 3 アイドルからスターへ、平等社会の終焉の受け容れ方
 4 デジタルコンテンツのコストと外部経済効果の連結方法
 5 アフィリエイト、プロモーション調査、そして個人情報保護


最終話 デジタル環境のコンテンツ産業はどこへ行く
 1 デジタルネットワーク上でコンテンツ産業は成立可能か
 2 コンテンツ産業の構造的力学変化
 3 産業政策的誘導の可能性と限界
 4 ビジネスモデルイノベーターはどう動く?
 5 鍵を握るハードウェア産業


補論*2 非貨幣的経済とビジネスアライアンス
 1 貨幣量と価値量
 2 コンテンツ産業に見るコミュニケーションとしての経済行為
 3 プロデューサの真の仕事〜クリエイティブと金融業の調停人
 4 ギョーカイのビジネスアライアンスの意味と貨幣経済的効果
 5 証券化万能主義を越えて多元貨幣政策へ

以上


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*1:授業は生き物なので、やっているうちに少し内容が変わることはあります。ま、普通はそんなに変わらないけど。

*2:授業時間にはひょっとしたら入りきらないかもしれないが、どうしても話しておきたいことをここに込めた。将来メディア産業、コンテンツ産業、或いは関連する産業や政策現場に進むのであれば、わかっておいてほしい視点である。