日々是雑感

 息子の名前が決まるまで、PCの前に座ると、することは原稿書きでも、なおさらブログ書きでもでもなく、姓名判断であった。出生届なるものは子が生まれてから14日以内にすべきものらしいが、13日と18時間めまで提出を渋ったのは名前が決まらなかったせいだ。様々な方々のご協力もあり、名前は晨仁(あさと)となった*1。読みにくい名前だが、想いはこもっているので、いつか晨仁が大人になって「なんだよこの名前!」と思った時に、ネット空間のどこかに転がっているこの前置きを見てもらえたら、嬉しい。本当に、一所懸命考えたんだから。



話題、1。なんといってもMacインテル移行につきる。これは、わかるけど、ちょっと衝撃。しかも提携先がインテルで、AMDではないあたりがさらに衝撃。いち部外者としては、MPUメーカーとしてのインテルと提携したのではなく、PC向けチップセット標準策定者としてのインテルと提携したのではないか・・・と思うというか、そうとでも思わなければ納得がいかんよな、ってぇことだ。MOSテクノロジーの6502に始まり、モトローラ680x0、IBM/モトローラPowerPCと、どちらかというと対称性の強いきれいなアーキテクチャのチップを渡り歩いてきたアップルとして、どうしてx86なんか、とは思うのだが。せめて野心的なプラン*2があると言ってくれ。いや、今は言わんでいいから、実行してくれ。


話題、2。OECDとかいう先進国クラブの情報経済ワーキングパーティに行ってきたのな。日本ではIT化によって産業構造が変わるとか、雇用のミスマッチがどうとかいわれているが、地続きの横の国にプログラマどころかコールセンターのもしもし姉ちゃんまでとられたヨーロッパの国々の真剣さに比べれば笑いぐさである。そんなことだから、iPodで音楽がダウンロード販売されるのは当たり前だし、BBCが番組ダウンロードやってるのも当たり前田のクラッカーである。問題はビジネスモデルやバリュー・チェーンのあり方であり、それを作るのをどう支援していくかが政府部門の役割ではないか、ときた。
 それじゃ我が国はといえば、世界でも強固なメディア産業の多重連携にあって、こうした動きはまだ起きてこない。でもですな、それで海外から「標準」とかいうのがゴンゴン来るのを待ってるだけでよいのだろうか?デジタル環境において、コンテンツはかならずハックされ、コピーされうる。「されうる」を「される」に変えるのは、ユーザーとビジネスの間の距離だ。距離が遠ければ「される」だろうし、それを法は「私的複製」の考え方で保護しようとするだろう。距離が短ければ「されうる」のみで実際にはされず、仮にした者がいてもそれを法は守らないだろう。しばしば忘れられがちなのだが、権利はドグマとして存在するのではなく、バランスある状態を生み出す*3ために権利は伸びたり、縮んだり、消えたり、できたりするものなのだ。HDDプレイヤーという横紙破りが出てきた以上、メディア産業側にも迎撃準備が必要である。


話題、3。OECDついでに、パリ在住の政府系団体コンテンツ担当爆弾ムスメ*4と2泊4日の行程では一回しかない非仕事メシを食べる。彼女はフランスには厳しい。いろいろ話をして、結論は、フランス人は中国人以上に不自由な国民だ、ということになる。そういう意味では、コミケにフランス人に来てもらって、<権威>に縛られたフランスでは味わえない<創作の自由>を体験してもらうことは、フランス文化改善運動にもなるのではないかなどと話をする。フランスの病理の根幹は、フランスが病んでいることに気づかず宗教としてのフランスマンセーイデオロギーに毒されているということで、それはフランス社会の自己批判意識の乏しさにあるのではないかということから、やはり、フランスでも自虐運動をすべきではないかという話にいたる。自虐といえば、ボケとツッコミの、ボケである。そうだ、フランスに「ボケ」を持ち込むんだ!ということで、是非、吉本興業にお願いして<アホの>坂田先生をヘッドとした*5「ボケとツッコミコース」をフランスの大学の芸能コース*6に作ってもらおうという話になる。マジでやりたい。


話題、4。パリではもうやっていたSTARWARS/Episode3"The Revenge of Sith"を見損ねた*7。と思ったら、ワーナーが米国での映画公開と同時に中国でDVD発売するというモデルを始めたという報道があった。海賊版対策だそうだ。DVDとはいかないまでも、普通、ハリウッド映画に関しては中国の方が日本より封切りが早かったりする。これも海賊版対策だと言われる。つまり、待たせているとどこからか海賊版が出てきて市場を汚されるから、早く公開しようというのだ。
 問題は、というか、やや気にくわないのは、だ。お行儀がよい日本はいつも後回しかよ、ということ。やはり、主張しなければ何も得られないのだろう。順法精神旺盛な人達への報酬は、後回しの刑である。ルールは力学で決定されるのだから。
 しかし、まぁ、お行儀がよいといえるかどうかはやはりわからないのが、我が同胞・日本人。HDDレコーダで広告代理店と地上波テレビ局に申し立てしているわけだが、セオリー通り*8なら、テレビ業界や代理店さんは「HDDレコーダなんてけしからん!」とかいうのではなく、それを前提にしたビジネスモデルとか新サービスを考えなくちゃいけないのだよね。期待してますぞ。



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*1:アラビア語のアサド(ライオンの意)になぞらえてある。晨という字は「生命が息吹く夜明け」の意味であり、仁という字は孔子の言う人間愛の究極としての仁である。

*2:例えばインテルMac用としてPC用の拡張版であるチップセット作らせて、インテルMacWintelの拡張版にして、インテルMacならVPCとかつかってどちらのOSも走らせられる(WinteiならWindowsとかLinuxとかだけ)ようにして、さらにアップルからちょっと遅れて他のベンダーにもライセンスするとか。そうすると、ライセンス料をアップルとインテルに払うだけでMacOSX/Windows/Linuxがネイティブで走るマシンができあがる。とかさぁ・・・

*3:これをしばしば法学では「正義」という。

*4:その筋の人なら、これだけで誰かがわかる。

*5:もし横山やすし師匠がご存命であれば、もちろんやすし師匠にお願いし、フランス人数千人で「メガネ、メガネ」をやってもらいたいところなのだが。

*6:権威主義の欧州本家であるフランスは、なんでも大学にコースをつくるのである。マンガコースもつくるのである。しかし大学で学んで書いたネームなど面白くもなんともないので、やはり無駄は無駄なのであった。ここらへん、コンテンツプロデューサコース流行の昨今、我が国でも他山の石にしなければならないのではないか。

*7:職場の先輩は、どうせ日本で見るんだろうに・・・といぶかる。いやいや、英語が不如意な私としては、多分パリで見ても日本ではもう一度みることになるのだ。でも、それを早く見たいと思うのがファン魂というものではないか。

*8:話題、2。を参照して頂きたい。