日々是雑感

 小寺信良氏がオタクという言葉の変遷についてまとめているコラムを見た。気になっていたのだが、80年代、人に言える「マニア」*1と人に言えない「オタク」という恥ずかしさを基軸にした対比は、女子高生が自らを「××オタク」だと叫び、「マニア」という言葉がSMクラブあたりに集中するこの2000年代には逆転したように思える。その用語法の変化を感じ、それに注目しているいる人が他にもいたことに驚いた。
 時は、移り変わっていくのだな。




話題、1。「みんなの滋賀新聞」が休刊し、「みんなでつくる新聞社」が自己破産したそうだ。このネタに反応して同紙の創刊告知を見て、僕はまたもや唖然とした。曰く、「誰でも、一度は疑問に思ったことでしょう。『滋賀県には地元新聞がない』ことを。そうなのです。滋賀県は全国で唯一、『県紙』・・・のない『空白県』だったのです」ときたもんだ。「うちの県にも××が欲しい」というこの根拠のない馬鹿げた言葉に釣られ、どれほどの金が無駄になってきたことやら。
 持論なので、一度書いておく。「過疎地域問題」や、「落伍地域問題」など、この世には存在しない。存在するのは、「過疎自治体問題」や「落伍自治体問題」にすぎない。自治体など、たかだか100年も歴史がない人造物であり、過疎だ落伍だというなら線引きを変えれば住む話だ。過疎だ落伍だと江戸時代に騒いだ記録は残っとらんわ。
 何事も経済効率が全てだと言う気はない。ただ、経済合理性がない線引きを真剣に守ろうとするのであれば、それはコストがかかる話だということは覚えておくべきだと言いたいのだ。人が作ったものは、人の手で変えられるはずだ。



話題、2。NTTドコモがタワレコの筆頭株主になったのだそうだ。ふーん、こういうオールドインフラ&メディアとIPインフラ&メディアの組合せもあったのか。



話題、3。iPodへの私的録音補償金賦課が見送られたようだ。一応、僕は経済産業省に勤める身なので、当然本件については反対派だと思われていると思うんだが、意外なことに、僕は録音補償金賦課に賛成だ。ただし、きちんと録音実態を把握し、それに従い補償金を権利者に分配する仕組み(少なくとも、たとえそうなっていなくても、それを目指して着実に進歩している仕組み)があればの話だが。



話題、4。アキバのぷらっとほ〜むが店舗を閉鎖するそうだ。「ぷらっとほ〜む」というとピンとこないが、「本田通商」というとピンと来る。「本田通商」といえば、「ロビン電子」と並んでAPPLE][のコンパチ商品*2の国内二大ベンダーだった。一応、僕はアップル純正のAPPLE][*3を持っていたので、主として部品の調達に関してこれらのお店にはお世話になった。懐かしい話だ。



話題、5。IBM、ノベル、フィリップス、ソニー、Red Hatの5社が共同で、Linuxに自分の権利を主張しない開発者と自分たちの特許とをバーターするための会社を設立したという話。”権利”がまさに無制限な形で発動するとき、その実質的内容は、"権利"の対象の性質と、"権利者"の行為のあり方によって決まる。だから、仮に一定のルールを作ろうとする場合、一定のカテゴリーに属する"権利"について、一定の規範*4に遵うもののグループを作ろうとする性質がある。言い換えれば、ルールは集団性*5と対になり、それは参加者の立場の安定のために*6自己増殖的になるのだ。ccやGPLなどのオープンな知財も、契約内容を見ればわかるが、そんなことになっている。単にフリーウェアとして使わせてもらっているユーザの視点からは見えないが、オープンな知財といえども、本質は贈与的なものではなく、交換的な存在なのだ。ただ、インセンティブの構造が違うだけで。
 批判がましく捉えないでほしいのだが、オープンな知財は、知財そのものによって飯を食うことを原理上は不可能にする。言い換えれば、オープンな知財という考え方は、多くの人々の"余暇"を結合することで、職業的な開発を代替しようとするものだ。これができるのは、トートロジーだが、その対象について開発することそのもの以外のところに生業を見いだせている個人/企業だけである。そしてそれができるのは、社会的蓄積が一定程度あって広くシェアされている先進国だけだろうし、それがどれだけ可能かが豊かさの証しといえよう。そうか、オープンな知財という運動は、使い方によっては、国家間競争における先進国の急発展諸国に対する攻めの戦略としても使えるのか。今、気がついた。




 主人公を曹操においたことで、我が国の三国志ものとしては横山光輝「三国志」についでエポックメイキングだったのではないかと評価している「蒼天航路」がついに終了した。「関羽は神になる。劉備は物語になる。曹操は・・・」というフレーズは、今後も使わせてもらいたいくらい気に入っている。作者、関係者の皆さん、いい作品をありがとうございました。





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*1:昔は「カメラマニア」とか「鉄道マニア」などという表現が普通であり、「オタク」というとロリコン、アニメ、コンピュータの三題噺になるという特殊な言葉だった。と俺は回想する。

*2:本田通商は"AP]["、ロビン電子は"HOGE基盤"という商品名だったように思う。だが、当時アップルは日本メーカーに外部ライセンスをしていなかったから、これは多分、世に言う「海賊版」にあたってしまうのではないかと思ってしまったりするのだが。

*3:だから、この言い方が正しいかどうかは皆さんの判断に任せる。

*4:法学は、それが、統治者による支配か、相互監視か、いずれかのメカニズムによるものだと教える

*5:ここでいう「集団」というのは、その内にいるか、外にいるかによって明確に自己の立場に実態的差違が生じるところの「人の集まり」である。特権の付与と剥奪、退出時の処罰、その他いろいろあるだろうが、それがこの集団の輪郭を醸し出す。

*6:或いは、仲間が増えることそのものが自己目的化している場合もあろうが。