珍しく国会や役所のことに胸を痛めたこと

 リアルで僕をご存じの方は、僕がすぐ「お役人さんはね」なんて言うもんだから、境は自分が役人であることを忘れているんだろうと思っているかもしれない。半分当たり*1。でも、半分は自覚がある。


 このブログにいただいたコメントや友人からのメールで、「谷みどりブログ」というものの存在を知って、顛末を見たのだけど、う〜ん、かわいそうですねぇ。何故かわいそうか、というと、すでにご指摘の方もおられますが、先輩*2は法律の執行者というかわいそうな立場と、お役所組織の一員だというかわいそうな立場と、それをネット上で体現しちゃっているという困った環境の中にいたからです。
 まず、わかって欲しいのは、役人はあくまで法律の「執行者」だということ。*3責任追及は国会、せめて政府与党に行ってくれ!というのが正直なところでしょう。
 そのことと関係あるのかないのか微妙なところですが*4、お役所のマインドの基本は「自己の無謬正の維持」、或いは「批判の回避」にあります。部長さまともなると、今自分が執行している制度が欠陥制度だなんて言われて、それを認めることはできないというのが役所の相場観でしょう。それは自己規制なのか、それとも周囲の組織人の圧力なのかわかりませんが。
 で、最後に、そんな不見識な批判をネット空間では受けざるを得ないということです。だいたい、上で法律は国会の半数以上の賛成で成立する、と書いたとおりで、別に国民の大多数の支持なんてうけているわけではない*5。だから、どんな制度でも反対派は沢山世の中にいる、ということになります。その人達が一斉に感情を爆発させることが、ネットではできる。
 この矛盾の中に敢えて飛び込んだ谷先輩は、勇気あるのか、アホなのか、それはわかりません。僕はこの矛盾を解消したいので、「自己の無謬正」を捨てることにしているわけです*6。僕は、誰に何を言われようが、正々堂々対話するという姿勢は尊びたいと思っています。
 この正々堂々対話するという姿勢をシステムとして維持するためには、批判する側にも是非協力して欲しい、というのが、このお話で書いておきたいことです。
 対話ということには想い出があります。今、私の働く経済産業省には「政策評価広報課」という課があります。何だか据わりの悪い名前なんですが、なぜこうなっているかというと、そもそもは「政策評価」は国民から経済産業省へのincoming、「広報」は逆のoutgoing、両者を併せて、国民と経済産業省は対話をしよう、という思想があったからです。少なくとも、僕もアイデア出しに参加した段階では(苦笑)。それがいつの間にやら、政策評価は「政策評価審議会」でやろう、なんていうようになったのは、結局のところ、国民の批判を浴びたくないということだったのだと思います。確かに、批判を嫌うのは問題ですが、国会と行政府の関係を無視して役人のブログにそんな批判を浴びせる国民であれば、批判そのものが不見識で拠るに足らないと思われてもしょうがないという側面もあります。
 こういう矛盾状況では、うだこだ言ってもしょうがなくて、後はどれだけ論争に付き合うかが誠意です。あのPSE法の内容についてだけいえば、確かにけっこうバランス欠いてる*7ので、批判はやむ無しかもしれません。ただ、一般論として、どこまでいっても反対する人はいて、最後は、そこは強行突破なわけです。谷先輩が閉鎖にいたるまでにどういう対応をしたのかは、今現在、僕は知りません。でも対話する気がある相手*8に対する批判のやり方は、批判する側にもちょっとそこらへんは考えて欲しいところです。そうでないと、せっかく対話する気になっている人をまた一人逃がしてしまうことになります。


 非難、批判というと、民主党の永田議員がちょっと大変なことになってます。彼とは世代も同じだし、華がある貴重な人材と思っていたので、今回の報道にはちょっと胸を痛めてます。ただ、ね。スキャンダル暴きや、個人批判というのは、議員としてのクオリティを下げていると、僕は思う。だから、今度のことがどうあれ、スタンドプレイはちょっと止めて、次は、政策と、政策をぶち上げる弁舌力で帰ってきて欲しいと思います。顔もいいし、声も大きいんだからさ、後は、聞いて愉快な、肯定感溢れる言葉を、頼みます。


 あー、役人っぽい書き込みだなぁ。




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*1:それとも、願望?!

*2:一応、僕にしてみれば先輩なわけです。

*3:え?起草してんのも役人だろ?というツッコミ、卓見です。でも、法律そのものは国会の半数以上の賛成で成立します。その責任は、悪法なのか、善法なのかは、国会が負う、という建前をその通りと受け取って役人は仕事をしています。

*4:法律の執行者にすぎない以上、法律の制定者を批判できない、という理由に拠るのか、それとも単に自らのプライド、或いは保身のためなのかがよくわからないのです。人は、どんなに恥ずかしい理由でも、それをきれいで正当な理由にすり替えるもので、役人ってそれがとてもうまいんですよね。場合によってはそのすり替えを自分にすら見えないようにしている(一般的に、それを全否定し続けた時に、最後にどこにこだわるかで見えるのですが、そこまで自分を追いつめないようですね)ので、外から見たらもう、さっぱり(^_^;) でも、どちらかといえば、プライド、保身のためかなぁ、なんて無責任ですが、実感します。

*5:それは憲法によって要請されていない。

*6:そういえば、レコード輸入権が制定されるときに、僕は自分のブログで正直に非を認めたわけですが、あれは一介の課長補佐、それも東京国際映画祭に出向中だったから許されたのですかね?内心ビクビクでしたが、結局、お咎めはありませんでした。

*7:これからの製造物に対する義務づけだけでなく、過去のものを売買しちゃいけないというあたりが、軽犯罪法で立ち小便を犯罪化したのと同じくらい偏執狂的な規定だとは思います。ただ、一般的には、規定が行き過ぎている場合は、その運用が緩くなって、結局それなりのところに落ち着くのが実態ですが。

*8:もし的はずれならゴメンなさいですが、批判に答えもせずブログを閉鎖したなら、単なるお役所広報かと非難されてもしょうがないのかもしれません。