タイムリープを嘆く

 いうまでもないが、筆者は平成仮面ライダーシリーズをけっこう高く評価している。というか、有り体に言えば、ファンである。
 そんなわけで、毎週日曜日の朝は「夫婦そろってライダーの日」なのである。最近では、息子が主題歌で踊るようになった。世の中には子供につられてライダーにのめり込み始めた親夫婦がけっこういると側聞するが、うちは親が子供を引き込んだ口である。
 そのなかでも、とりわけ今年の仮面ライダーカブトは高く評価している。いや、していた?うーん、まだして「いる」?。


 カブトはキャラの立たせ方や、主役以外のライダー挿入の仕方など、見るべきものが多かった。最近の仮面ライダーキックホッパー&パンチホッパー*1も、出し方や動きも当初思ったほど悪くはない。
 しかし、スピードアップを越えて時間までさかのぼれるようになったハイパーカブトって、何?


 タイムリープは、SFの中でもストーリーに破綻を来しやすいネタとして、とりわけ注意すべきものであることは言を待たない。とりわけストーリー性が強い作品なら、細心の注意が要る。
 平成ライダーシリーズの内、同じようにタイムリープが重要な役割を果たす「仮面ライダー龍騎」の場合、タイムリープ能力が主人公の支配下にないこと、どこまで時間を遡っても不治の病だったヒロインが治るわけではないこと*2で物語の破綻を食い止めている。
 ところが、現時点において、カブトのストーリーの根にある物語(石ノ森章太郎先生的には、悲劇と言い換えてもよいのではないか)は「主人公の父母がワームに殺され、ついでに妹がワームになっちゃった」という事件である*3。また、ここら辺の事情は、重要な事実をある程度は知っていたはずの立川というネイティブが、10/8放送の回でほとんど何も語らずにワームに殺されてしまったために、観客はもとより主人公にとっても謎のままになっている。そして、今のところカブトは自由にハイパーカブトになって時空を越えられるということになっている。
 じゃあ、主人公はハイパーカブトになって両親を救えばいいじゃんか!少なくとも、立川が殺される前にタイムリープして、こいつを救って謎をあらかた聞いてしまえばいいじゃないか。と、思ってしまう。


 コンテンツを楽しむ時に大事なことは、制作者の手のひらに敢えて乗っかるという態度だと思う。ストーリーの矛盾をついて鬼の首を取ったようにいい気になることは、無粋というものではなかろうか。どんな疑念を持っていようと、それを制作者が見事に解決してくれることを期待して、まずは毎週日曜日にテレビの前に座ることを私は選択しよう。
 でも、きちんと矛盾は解決しておくれよ。さもなければ、カブトの評価はAからCまで一気に三段階くらい落とすからな。


 解決を期待して、とりあえず前進。




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*1:二人をあわせてアクセルホッパーと呼びたいところだが、それではエンタになってしまう。ちなみに、このネタは2chのライダー関連スレでイヤというほど繰り返されたが、何度聞いても、芸人の名前とか何とか抜きにしてはまったネーミングではあると思う。

*2:生まれ直すところまで戻ってしまえば不治の病は治るが、これは取り得ないオプションである。なぜなら、この話ではタイムリープ能力を操るのはヒロインの命を助けたいその兄であるが、生まれ直すとそもそもヒロインが生まれるとは限らないことになるから、その選択は本末転倒になる。結局、不治の病を抱えて生まれたこの妹を救うことにタイムリープ能力はギリギリのところで役に立たないのである。

*3:劇中では、広義のワームのうち、地球在来種=ネイティブがいて、「・・・」内でいうワームはネイティブだということになっている。ネイティブは人間の味方をもって任ずるので、この「殺された」という事象についても、主人公の誤解ということを含め、いろいろ認識や解釈の変更が予定されていると思う。だから、この部分は現時点での認識バージョンであり、ペンディングとすべき内容である。