嘘か真か?音事協、起死回生のイッパツ?!

 最近、よく新聞を読んでいるように感じるのだが、それは今日も日経新聞の一面について書こうかなと思っていることからも明らかだ。


 フジテレビと音事協が、テレビ番組の配信にかかる契約について合意を結んだということだ。この話にはいくつか注意すべき点がある。

  1. このテレビ番組がCSのものであること。これがCS番組から始まるというのは、言い換えれば、この契約内容がそのまま地上波に適用されるかどうかという点では留保をつけている、ある意味では実証試験的な意味に留まることを暗示している。
  2. 契約がワンチャンス主義*1だということ。ごく単純にいえば、消費量がわかる形の流通態様には本来はレベニューシェア契約が合理的にも思えるところだが、まあそこはどれほどのビジネスになるかわからないという不信感や、フジテレビほどの会社だから一時金もとりやすいだろうというタレントビジネス側の読みもあるかもしれない。テレビ局側にしてみても、今回想定している有料視聴方式だけでなく、様々な利用方法を念頭に置くと、この方が都合がよいということもあるのだろう。ただ、タレントビジネスの本質からすれば、特にスターについては報酬分配+MGという形の方がありがたいのは当然である。今後契約形態の多様化がどこまであり得るか、気になるところではある。


 コンテンツ製作会社*2としてのテレビ局の、メディア企業としての側面と他メディアとの利害調整については、すでに昨年「エウレカセブンモデル」が登場*3して、だいたい相場観が作られたということになっている。これで実演家との関係の整理もつけば、新作についてはだいたい相場感ができたのではないかとも思われる。


 でも、まぁ、そうはいっても、経団連での議論に横やりを指したと批判された音事協ではあったが、これまで水面下で1年以上話してきていたフジテレビとの交渉をとりあえず死産させずに世に出したわけで、このことは正しく評価すべきである。それだけでも、とりあえず、前進!
 これが来るべきプレイリスト2.0によるテレビ2.0への進化のマイルストーンとなることを、まぁこの話もいろいろ深読みはできるわけで、期待しすぎない程度に期待したい。




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*1:ワンチャンス主義というのは、ある特定の段階で以後の行為全体についての対価を収穫する契約で、以後の一つ一つの利用に関してその都度対価を収穫する契約(報酬分配などという)の対立概念である。この中間に、一時金(報酬分配の一定分前払いとして最低保障報酬(MG)を支払う方法や、それをそもそも分配論とは別に契約金として支払う方法がある)と都度報酬を組み合わせるものもある。

*2:「制作」という場合には、作品を作るプロセス統括がイメージとしてある。一方で「製作」という場合には、そのための資金を工面しているというイメージがある。ここで、資金はテレビ局ではなくて電博、いや、電博ではなくて広告主が・・・などということはいわないのが、この業界での「大人の態度」ということになっている。

*3:毎日放送USENによる製作委員会=共同製作型ビジネスモデル。毎日放送が他数社と共同製作したアニメ「エウレカセブン」に対し、USEN毎日放送の放送時の広告枠に広告を出稿する形で資本参加することで、公衆送信権の処理を事前に行い、テレビ放送直後からUSENGyao等での利用を可能にしたというもの。