Jobsを信じちゃいけないよ
アップルのジョブスが香ばしい発言をしてくれた。もちろん、iTunesとiPodのDRMについて述べたThoughts on Musicのことだ。
伝えられる個人的な言動は別にして*1、ジョブスは極めて公に対する言動は抑制的な人で、アップルのビジネスにきちんと即した発言をすることで知られる。というか、ビジネスに即していれば、朝令暮改すら辞さないほどだ。
この発言についても、DRM開放要求と、開放しないFairplayに対するiTS違法判断に対する牽制と考えるべきだろう。
と、わかった上でマジレスを仮にする。
文中で、ジョブスは三つの途を語る。
1.これまで通り、個別のDRMするだす。
2.Fairplayを他社にライセンスするだす。
3.DRMやめるだす。これ一番だす。
これに対して、DRMをやめるというオプションだけ以上に世間の関心を引いているが、それは厨房の態度だ。確かに、ジョブスの言うとおり、「消費者にとっては一番いい」わな。だが、音楽産業には過度にキツイわな。
実は、これにはもう一つ読み方がある。「消費者(とハードメーカー)にとっては一番いい」と。同じことをiPodのデザインや特許について言ってもよいのだが、まぁジョブスはそれには乗らない。そんなもんだ。
それに、バランスを欠いたソリューションは、長期的には、消費者の利益にすらならない。だから、これはまず反対するし、多分、こうはならない。
それと、以前も書いているが、iTSにはDRM解除方法が用意されている。例の、CDに焼いてリップし直すというものだ。本来なら、これだけでも音楽産業には激怒ものだが、それが手間という点でコストが高いので、あんまり誰もやらないから問題にはあまりなっていない。
ただ、現在のLess-DRMをNo-DRMにすると、影響は甚大だ。
消費者の利益、というが、生産者を維持するメカニズムを考えない消費者はドロボーに近い(それがドロボーでないとすると、それを保護しない法律の責任も大きい)。まぁそれはそれで所詮は消えていくべき産業だったんだと言えばそれまでなんだが、それでいて生産者にその供給を依存するというのは、得手勝手、都合のよすぎる話だ。俺は自分で自分向けに音楽作るような気はないから、音楽を商品として購入するのはしょうがないと思う*2。
で、これをアップルの戦略文書として読み直してみる。
3.はとれないというのは上記の通り。レーベルもこれは納得しない。
で、1.は何の解決にもならないから意味無し。
結局、2.を言い出すための文書ではないか、と僕は思うのだ。もちろん、Fairplayを他社にライセンスすればクラックの可能性は広がる。しかし、この部分がアップルの布石。ライセンス後、仮にクラックされても、事前にしておいたこの指摘を示して逃げる、と。もちろんFairplayのバージョンアップはするわけだが、この指摘をしておいたじゃないかと常に唱えることで、周囲をやり過ごし、この仕事に過度に振り回されることを防ぐ、と。
ま、答えはしばらく後にならないと見えないわけだが、ジョブスは食えない禿だということをよく考えてこの文書は読むべきだ。「消費者の味方、禿、マンセー」なんて言ってると、orzな目に遭うぞ。
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