海外展開支援という夢を幻にしないために

産業が海外市場へ進出することは正しい。少なくとも、一国経済の視点からは絶対正しい*1。だからこそ、天秤はコンテンツの海外展開を常に主張し、支持してきた*2
と、そこに総務省の業界団体が携帯電話や無線関連技術を海外に売り込むアクションプランを公開したという報道があった。コンテンツと技術と、違いこそあれどこかで聞いた話だ。
コンテンツの海外展開については、まだその夢は現実になっていない。もちろんゲームやアニメ、マンガといった成功例はあるが、それがどれほどの成功になっているかという議論はさておき、海外展開を振興するといってから新しい成功例が生まれていない。つまり、政策としては現在までのところ失敗しているといわざるを得ない。
このコンテンツの海外展開促進プランと、報じられている無線関連技術の国際展開促進プランの間には奇妙な類似点がある。それは、行動計画策定が先行し、内容は営業努力や人材交流に終わるというものだ。ヒト、モノ、カネに直結する具体的なアクションがないという点である。
所詮は、海外展開という言葉は、明治維新以来の「世界に伍する」症候群に訴えるマジックワードにすぎないのかもしれない。事業者はそこまで真剣になっていない。そして役人も、そんな低温の事業者と心中してやろうとまで熱の入ったヤツやいやしない。政治家たる大臣*3だって、役人が発案するからハンコを捺しただけだろう。
海外展開を促進するためには、真剣に売り込むヤツに、商品価値あるネタを預けなければならない。できれば、買い手が試しに買ってもいいかなあと思えるような、「サービス」も欲しい。これは鉄則である。
ところが、コンテンツであれ、技術であれ、この当たり前の構図がうまく作れない。技術屋やクリエイタ(或いは国内メディア事業者)が、さして覚悟も力も入っていないのに、海外に売りたいと宣う。これではうまくいくはずもない。
このミスマッチを解消することが海外展開政策のキモである。政府が乗り出すなら、そのくらいしなくてはならない。よね。

*1:手法論はさておき、である。レーニン的な意味での帝国主義は、そう言う意味で、正しい。だからこそ20世紀初頭の労働者インターナショナル運動は頓挫することになったわけだ。

*2:実は、CODA=「コンテンツ海外流通促進機構」って、名付け親は天秤だったりする。

*3:現在の増田総務大臣は民間登用で国会議員ではないけれど。