TVのネット化と映画のネット化

 日経新聞などが報じたところによると、東宝と角川がNTT東西と組んで映画のネット配給*1に乗り出すことが決定したらしい。
 日本は映画配給会社の垂直統合モデルを許してきた*2ので、むしろネット配給は米国より早く進んで良い*3と天秤は常々言ってきた。だから、予想の範囲で驚かないが、これを直営館以外の映画館に低ストレスで普及させる手法というのは、東宝や角川は考えているんだろうか?
 ま、考えていないだろう。
 ネット配給をデフォルトにして、フィルム配給するならフィルム代をくれと系列外映画館にはいうのかもしれない*4。いる。しかしルーカスの挑戦も映画館業界の反発にあってうまくいかず、韓国や日本でもそれほど進んでいたとは言えなかった。
 どうせこの動きはNTTのNGN活用促進政策の上で起きている話なのだから、NTTが映画館に映像配信設備の購入整備のための低利融資措置とか、設備の低価格リースサービスとかすればいいのに。


 だが、これは映画産業だからまだ簡単に喜べる。フィルムによる配給コストはネット配給に比べ明らかに大きく、そのメリットはあまりにも明確だからだ。
 しかし、テレビの場合、そうはいかない。映像を各家庭の今の大画面に届ける方法としては、届けるべき映像のバリエーションが小さければ、電波でばらまく放送の方が、ネット配信に比べてかなりコスト安だからだ。
 テレビは、映画のように単純なリプレイスでは済まないぞ、と。

*1:映画館に向けて、フィルムではなく、IPネットインフラを用いてデジタルコンテンツ形式で配給すること。デジタル配給というのはパッケージメディアを使ったもの、放送用電波を使ったものなども含むので、これよりは狭い概念である。

*2:というよりも、独禁当局が相手にしなかっただけという説もあるが

*3:映画のネット配給問題は古くて新しい問題である。技術的にはブロードバンド化が進んだ2002年頃にはすでに現実的に可能になっていた。最大の問題は、一方的受益者である配給会社と、一方的負担者である劇場の間の利害関係が調整できなかったということに尽きる。例えば、ルーカスはエピソード2をデジタル配給しようと旗を振ったが、それも劇場産業の激しい反対で挫折した。

*4:でも、それでフィルム代を製作会社に要求したら二重取りなので、そこら辺業界の人は注視のこと。