GRACENOTEの仕事とテレビの時代の終わり(?)(CES、その1)
某団体の調査でCESに来ている。3年ぶりのラスベガスだが、そこいら中で中国人がギャンブルに明け暮れる中、スロットの一つもしないでこんな文章を書いている。
CESでGRACENOTEのブースに立ち寄り、責任者と話しをすることができた。GRACENOTEというのは、今、日本の著作権団体などが一番使っているコンテンツフィルタだと思う。噂には常々聞いていたが、ホンモノを見る機会がないまま、なんとラスベガスくんだりまで来てようやくホンモノに出会えたわけだ。
GRACENOTEは実は天秤もお世話になっている。iTunesでCDをリッピングしたりすると自動的にアルバム名や曲名を引っ張ってくれる、あのデータベースだ。もともとは利用者が自発的に寄せてくれた情報のようだが、それが今では商用利用もできる楽曲マッチングデータベースになった。どんな曲でも、そのうち3秒分がサンプルとして取り出せれば、曲名とアルバム名が分かる*1。誤差は3.6×10-20というからたいしたもんだ。
同様のフィルタリングは映像でも可能で、4.5秒分くらいのサンプルが要るらしいが、まぁそれでも大したものだ。本当は映像と音のダブルチェックでもよいが、片方でもまぁだいたいの用はなす。
これを信頼すると、ネット上のある場所に置かれたコンテンツの違法利用の摘発は極めてやりやすくなる。もちろん、その場所の特定は要るわけで、逆に言えば、ネット上の全ての違法利用を察知することはできない。けれど、一般のユーザーが使うようなところはこれで管理しやすくなる*2。こうなると、適切なライセンスで自由利用空間を作らせることで、ネット上に「一般人も使うキレイな空間」を切り出すことができるかもしれない*3。
こうして、ネット空間にコンテンツ産業が拠って立つ「メディア」を作ることが、とりあえず可能になる*4。Ethernetケーブルをチャンネル数無制限のCATVケーブルにすることが可能になる。
もちろんそんなことはこれまでも構想され、行われてきたが、これまでのトライアルはお行儀が良すぎて違法流通に対する競争力が無くて潰れるか、なし崩し的に行われたためコンテンツ産業としては認めがたい流通方法になっていた。だが、その正規化ができれば、長い間構想されていたこのインターネットによる総CATV化にも光明が差し込んできたようだ。
テレビの時代が終わる、というのは言い過ぎだ。しかし、テレビの新しい時代が来るとは言えそうである。