今更だけど今年の年末年始のTBSがすごかった件

 ホント、今更の話題なんだけど、書いておいた方がよいと思うので。
 スゴイというのは、新作番組がものすごく減っていて、ストックコンテンツの再放送が多かったことだ。「その手があったか」なんて書いていた記事もあったようだけど、その手があることは前々から分かっていたわけで、もし分かっていないならそいつがアホなだけだ。
 新作をしぼった理由が制作費の削減にあると考えるのは多分正しい。そしてその理由は08年の業績低迷なのだろう。だが、そんな理由がなくても、コスト削減は売上拡大に並ぶ企業戦略のイロハのイの字なので、それ自体は普通に誉めて良い。
 ただし、テレビ局は番組製造産業(の少なくとも一端)である。そして人材の育成に経験の蓄積が不可欠であるというのは言うまでもないことだ。結局のところ、コスト削減は結構だが、それでTBSのスタッフ(社員であれ、関連企業のであれ)の経験蓄積が遅れるというのは、長期的視点で見て危ういことだ。
 映画産業は、二本立てによってスタッフ育成機会を多く作っていたが、業績低迷により収益性を高める*1ため二本立てをやめた。結果として新人育成の場は、ポルノなど別の領域に移り、今ではそのポルノ市場さえ十分機能しているとは言い難い。映画産業は今やテレビ系人材にかなり依存している*2
 テレビ産業には、この業績低迷に直面してもなお、人材を育成するという長期の事業循環メカニズムのことは忘れて欲しくないものである。
 ま、その時にはネット系映像で腕を磨いた人材がテレビ番組を作るようになっているのだろうからそれでいいかもしれないが。

*1:二本立ては一人の劇場滞留時間が長いため、劇場の回転率が悪くなり、比較的収益性の低い方法だと考えられている。ただし、ここでは二本立てのお得さにひかれていた観客が減少する可能性は無視している。

*2:映画の独自性を強く言う人が映画業界に多いことは事実だが、例えば撮影監督教会の故・高村倉太郎先生は常々「映画とか、テレビとかない」と仰っていたように、映画だとかテレビだとかいうことがそもそもおかしいという視点を持つ人も多い。そういう目で見れば、これはどうでもよいことなんだな。